わきが(ワキガ)・多汗症治療の場合でいいますと、まず核となる局所麻酔にアメリカで開発された「カリフォルニア式局所麻酔」を使用します。さらに手術に対する恐怖感を和らげ、心身をゆったりと落ち着かせる「リラックス麻酔」を併用します。また、麻酔注射の痛みを軽減するために「極低温ガス麻酔」を用いて、極力痛みを抑えます。
この麻酔法によって、手術前から術後にいたるまで、痛みを気にすることなく治療を受けることができるようになったのです。
◎わきが(ワキガ)・多汗症治療に適した「カリフォルニア式局所麻酔」
麻酔というものには、実はさまざまな働きがあります。手術をスムーズに行うための前処置に使ったり、治療効果を高めたり、術後の経過を良好に保ったりと、実に多彩な働きを持つのです。そして何よりも痛みを抑えて患者様のストレスを軽減する、というのが、麻酔の持つ最大の役割です。
麻酔と聞いて一般の方がイメージするのは、おそらく「全身麻酔」でしょう。「眠っている間に手術が終わる」というイメージから、「全身麻酔なら、手術も楽に受けられる」と思われるかもしれません。手術に対して恐怖心を持っている方であれば、なおさらでしょう。
しかし全身麻酔では大がかりな設備と専門のスタッフが必要なうえ、患者様の肉体的負担が非常に大きくなります。術後の経過観察は欠かせませんので、最低でも一泊の入院は必要です。つまり全身麻酔はわきが(ワキガ)・多汗症治療には向かない麻酔法なのです。
そこで私が注目したのが、カリフォルニアで開発された「カリフォルニア式」と呼ばれる局所麻酔法でした。この麻酔法をベースに日本人の体に合うように改良し「体に優しい麻酔法」としてでき上がったのが、北村クリニックの改良型「カリフォルニア式局所麻酔」です。
この麻酔法では、注射する麻酔薬のpH(ペーハー)や浸透圧を人間の体液と等しくなるように調製してあります。さらに、優れた止血効果のある薬も配合しました。そのため体内に無理なく優しく浸透していき、手術中の出血を抑えると同時に麻酔効果を高め、さらにそれを長時間にわたって維持することができるようになりました。ですから麻酔による不快感は軽減され、また麻酔効果が切れる頃には手術そのものの痛みも治まっていますので、手術後の疼痛の軽減にも大きく貢献しています。
さらにわきが(ワキガ)・多汗症治療の場合には、皮膚と汗腺類を軟化・分離させる薬剤を配合して、麻酔薬とともに注射します。これが「ハイドロ・ダイゼクション」という処置ですが、こうすることでその後の手術がスムーズにでき、治療効果をさらに高めることができるのです。もちろん手術時間の短縮にもつながりますから、患者様にとっても大きなメリットとなります。
高い麻酔効果と長時間にわたる持続性、患者様への負荷の軽さ。すべてを兼ね備えた麻酔法が、北村クリニックの改良型「カリフォルニア式局所麻酔」なのです。
◎痛みを抑えストレスを避ける、麻酔の名脇役たち
「手術以前に、注射の痛みが苦手」という方もおられるでしょう。わきが(ワキガ)・多汗症治療では、敏感な「ワキ」に注射するわけですから、なおさらです。そのため北村クリニックでは、麻酔注射の前に「極低温ガス麻酔」を使い、痛みに配慮しています。
これはいわば「麻酔のための麻酔」のようなもの。非常に温度の低いガスを皮膚に吹き付けて一時的に皮膚の感覚をマヒさせ、その間に麻酔注射を打つ、というものです。肌の感覚が鈍るのはごく短時間のことですので悪影響は残りませんし、もちろん凍傷や肌荒れの心配もありません。これなら注射が苦手な方でも安心でしょう。
また局所麻酔を補うものとして、当院では「リラックス麻酔」も併用します。これは点滴で注入していく麻酔薬で、高い鎮静・鎮痛効果を発揮します。この麻酔が聞いてくると心身がゆったりとリラックスして、半ば眠っているような状態で手術を受けることができるのです。
もちろん全身麻酔とは異なり意識はありますし、術後の入院は必要ありません。
これらの麻酔は「カリフォルニア式局所麻酔」の脇を固める、いわば名脇役ともいえる存在です。ですが主役だけでは舞台が始まらないのと同様、これら名脇役たちの活躍があってこそ、安心して治療を受けることができます。
わきが(ワキガ)・多汗症治療においては、麻酔は単に「痛みを取り去る」だけのものではありません。患者様の心身の負担を軽くし、治療の効果を高めながら、安全なものでなくてはならないのです。
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