まず全体の流れを一見すると、先端機器を多く活用していることがお分かりいただけると思います。ですがこうした機器類は単に「使えば良い」というものではありません。その実力を充分に引き出すためには、豊富な症例に基づいた熟練の技術が必要なのです。
では次に実際の手術の流れに沿って、ご説明していきましょう。
わきが(ワキガ)・多汗症の手術では、ほとんどの方が傷跡を心配されます。もちろん手術となると肌に手を加えることになりますから、その痕跡が「完全に残らない」ということはありません。ですが北村クリニックの治療ではメスを使わず、小さな穴を開けるだけです。そのため大きな「手術跡」が残る心配がありません。
もちろん傷の治り方には個人差もありますが非常にきれいな仕上りで、傷跡はほとんど目立ちません。大きな切開を伴う手術法では、どうしても避けられない手術跡の不安も、北村クリニックならば心配ないのです。
◎カルフォルニア式局所麻酔で、痛み対策は万全です
手術はまず局所麻酔から始まります。北村クリニックでは体に優しい「カリフォルニア式局所麻酔」をベースに、いくつかの改良を加えた麻酔法を使用しています。また麻酔と同時に「ハイドロダイゼクション」という処置を行い、皮膚と皮下の汗腺類を軟らかく分離させ、その後の治療を行いやすい状態にしておきます。
麻酔が効いてきたところで、先端に丸みを帯びた特殊な器具で皮膚に直径数ミリの小さな穴を開けます。ここからさまざまな器具を差し込み、汗腺類を破壊・除去していくのです。
北村クリニックでは
「ベイザー2.0」というハイテク機器を使用しています。これは最大36000Hz の強力な破壊力に加えて、優れた操作性
を持つ超音波手術器です。
この「ベイザー2.0」は、簡単に言えば、超音波を発生させる機器です。
超音波そのものは、かなり昔から医療の分野で活用されてきました。また超音波の持つ「選択性」…狙った組織だけを破壊し、それ以外の組織を傷つけずに温存するという特性を活かして、超音波手術器などはさまざまな手術に広く用いられてきました。そして超音波の特性をさらに高め、洗練させた「ベイザー2.0」を、私はわきが(ワキガ)・多汗症治療に採り入れることにしたのです。
「ベイザー2.0」は破壊したい汗腺と破壊してはならない血管や神経といった組織の違いをはっきり見分け、汗腺だけを破壊することができます。これにより、汗腺以外の組織への影響を低く抑えながら、治療できるようになりました。これが北村クリニック独自の方法なのです。
また「ベイザー2.0」では超音波を発生させる先端部分に新たな工夫が施されているため、堅さが異なる組織に対しても、常に安定した効果を発揮してくれます。
◎器具の先端が1 秒間に36000 回の高速で振動する新テクノロジー
「ベイザー2.0」の機能をもう少し詳しく説明しましょう。この超音波手術器の振動部分は、1 秒間に36000 回という高速の伸縮運動を手術部分に伝達しています。その振動エネルギーによって、弱い部分の組織が見事に破壊されて吸引されていきます。一方、弾力性に富む血管や神経組織などは共振を起こすため、破壊されたり傷つけたりすることはないのです。この「ベイザー2.0」導入によって、
より確実で効果的なわきが・多汗症治療を行えるようになりました。
さて、「ハイドロダイゼクション」と「ベイザー2.0」、さらに「医療レーザー」で破壊された汗腺類は、きれいに取り除かねばなりません。
それにはカニューレという金属性の細い管を皮膚に開けた穴から差し入れ、さらに吸引器につなげて、掃除機で吸い取るように破壊した汗腺類を取り除いていきます。
カニューレは昔からある手術器具で、用途に応じてさまざまな長さや太さがあります。ですが私はどうも既製品のカニューレに満足できず、穴の角度や大きさを変えて何度も作り直し、もっとも吸引しやすいものを特注しました。それが現在使用している「北村式カニューレ」です。
また吸引器についても一般的なものは吸引力が不十分で(約50Torr)、迅速かつ確実な汗腺の除去には不向きでした。そこで、
通常の2倍という強い吸引力(100Torr)を持つものをオーダーし、それを使用しています。これで汗腺類の取り残しがほとんどない確実な吸引を、スムーズに行えるようになったのです。
ここまでの段階で、汗腺類の大部分は取り除くことができます。しかし汗腺類の分布範囲は人によって違い、その外周部は手が届きにくいこともあって、わずかな取り残しはどうしても残ってしまいます。それをきれいに掃除するのが高周波機器「デジタル・エレクトロ・コアグレーター(DEC)」です。これは高密度の高周波シグナルを発生させて組織に作用させ、瞬間蒸発させるハイテク機器なのです。
このDEC には優れた点がいくつもありますが、中でも素晴らしいのが
・ メスやハサミのように組織を傷つけることがない。
・ ミクロ単位の精密な結果が得られる。
という2 点です。
DEC は3.8 メガヘルツ×140 ワットという、高密度で微妙な高周波電流を発生させて、そのエネルギーを汗腺に作用させます。すると汗腺の細胞を瞬間的に破壊・除去することができるのです。繊細な操作が可能ですから、メスやハサミのように誤って周囲の細胞を傷つける心配がありませんし、同時に
ミクロ単位の精密な結果が期待できます。また処置する際には細菌などによる感染を予防できるというメリットもあります。
「ベイザー2.0」と「医療レーザー」、さらに強力な吸引器による吸引除去。その上でDEC による分解と、何重にも及ぶ処置を組み合わせたことで、北村クリニックのわきが(ワキガ)・多汗症治療は画期的な進歩を果たしました。それまでの治療が「まだかすかに臭う」というレベルだったとすれば、今や「臭いや汗が全く気にならない」というレベルにまで、治療効果を高めることができたのです。
ベイザー超音波とレーザーによる破壊、北村式カニューレと特注の吸引器による吸引。さらに高周波による分解処置という3 つの段階を経て、汗腺類をしっかり取り除いたあとで、北村クリニックでは
ファイバー・スコープによる目視確認を行います。
皮膚を切開する手術と異なり、北村式では皮膚に開けた小さな穴から治療を行います。そのため傷跡の不安はないものの「患部を目で見ながら汗腺類を取り除く」ということができません。
そこで汗腺類が十分に取り除けているか、取り残しはないかを確認するため、ファイバー・スコープを使うのです。
このファイバー・スコープは、アメリカで開発されたもの。皮下に差し込む部分は非常に細くかつしなやかに作られていて、その先端には小さいながら高性能のHILUX ランプとHYPER・HAD・CCD を装備しています。そのため患部のすみずみまで明るく照らし、手術の結果を鮮明な画像として見ることができるのです。
このファイバー・スコープを皮膚に開けた穴から皮下に挿入し、治療の結果に問題がないかを確認します。もしも取り残しがあるようならば、再度、高周波で分解します。この作業を汗腺が十分に取り除けるまで繰り返すのです。
ファイバー・スコープの導入によって、北村クリニックのわきが(ワキガ)・多汗症治療の確実性は、さらに高まりました。今までは見ることができなかった患部の様子を確認しながら治療を行うことで、傷跡の不安を低く抑えながら高い治療効果を得ることができるようになったのです。
ワキガ治療は、簡単に見えて非常に細かなテクニックを必要とします。その人の年齢や皮フの厚さなどによって、使用する器具や、その出力レベルなどを微妙に調節しなくてはならないからです。
つまり「一人一人に合わせた丁寧な治療」が必要になるのです。そのためには、豊富な症例から得られる「職人的なカン」が必要となるわけです。
まさに美しいオートクチュールの服を手作りで作るようなイメージで治療が行なわれるのです。